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米国の化粧品に関する諸規則の将来(2021年度版)


ご注意:こちらの記事は「米国の化粧品に関する諸規則の将来(原題:The Future of U.S. Cosmetics Regulations)」の2021年度版です。

米国における化粧品規制の見通し

米国の化粧品産業はその規模が数十億ドルにまで上るなど、急速に成長している。化粧品を規制する米国食品医薬品局(FDA)によると、2020年度に米国に輸入された化粧品は230万アイテムを超えている。しかし、現在の規制やリソースでは、有害性を疑われる化粧品の流通を阻止しきれないため、増え続ける輸入化粧品が課題になっている。
FDAが2020年に検査できた化粧品はわずか2,823アイテム(全体の1%未満)に留まり、検査を受けた化粧品のうち538(19%)アイテムは規制違反として米国内への受け入れが拒否された。検査を受けていない貨物の中には、多くの有害な不適合製品が取り締まりをすり抜けて店頭に並んだおそれがあるといわれている。
一方、米国内で製造され、市販前に検査の対象とならない製品にも、別の問題が生じている。2018年4月、ロサンゼルスの詐欺師が、米国セレブ、カイリー・ジェンナーが手がけるコスメブランドの名を偽ってメイクアップキットを販売していたことが判明した。カイリーの姉コートニー・カーダシアンが議員に働きかけたことがきっかけで、化粧品規制は厳格になった。

積極的な規制に対する対応

現在のFDA規制は事後対応で、すでに米国で流通している商品のコンプライアンス問題に対処する場合が多いようである。不適合製品に対しFDAは警告書(Warning Letter)を発行して受け入れを拒否することができるが、FDC法ではFDAに製品回収の権限は付与されていない。
食品、医療機器、医薬品といったFDAの管轄下にある他の製品は、より積極的に規制されている。これらの製品は市販前の資料提出や施設に関する要件が課せられており、著しく不適合な製品が米国内に持ち込まれるのを防止するだけでなく、取り締まりの強化にも役立っている。
化粧品についても同等の規制を適用するため、米国議会はパーソナルケア商品の安全性に関する法案(Personal Care Products Safety Act)を提出した。この種の法案の提出は今回が初めてではなく、化粧品の安全および近代化に関する法案(FDA Cosmetic Safety and Modernization Act:S2003)や安全な化粧品およびパーソナルケア製品に関する法案(Safe Cosmetics and Personal Care Products Act:H.R.6903)は、まだ可決に至っていない。これらの法案には、米国の化粧品規制のこの先10年の方向性を示す共通点が見える。今回は、パーソナルケア商品の安全性に関する法案、あるいは類似の法案が可決された場合に予想される主な変更点について触れておく。

化粧品施設登録の義務化

FDAは、その管轄下にあるほとんどの業種に対して、米国市場に製品が参入する前に事業所の登録、または報告を義務付けているが、現在の規制では、化粧品施設の登録は任意であり、義務ではない。
法案では、米国での流通を目的とする化粧品の製造、加工、または(場合によって)流通を行う施設にはFDAへの登録が義務付けられている。また、以前の法案では毎年、または2年に一度の登録更新が盛り込まれていた。今回の法案では毎年の更新が義務付けられるようになっている。また、これまでの法案同様、米国外を拠点とする施設には、当該施設の代理としてFDAの交渉窓口となる代理人(U.S.Agent)を米国内に設置することが義務付けられている。
化粧品施設の登録を義務付けることにより、FDAは米国で化粧品を販売する事業者を記録し、未登録業者からの製品を保留あるいは拒否する権限を持つことになる。この法案が可決されれば、FDAは規制に違反する施設の登録を保留し、米国内での製品の販売を効果的に禁止することもできるようになる。
また、過去の法案同様、パーソナルケア商品の安全性に関する法案も年間総売上が平均1000万ドルを超える化粧品企業については登録プロセスの一環として年額料金が徴収されるようになる。

化粧品の成分表示

新たな法案では、米国内での販売を目的とする化粧品ごとにその成分表示をFDAに提出することが義務付けられる。成分表示には、化粧品製造施設に関する情報、化粧品の成分、適用される注意事項に加え、その他の要件を記載しなければならない。成分表示は、製品の市場投入または成分の変更後60日以内、その後毎年FDAに提出しなければならないとされている(S.1113と同様)。
化粧品の成分表示によって、FDAは特定の施設が加工した製品を把握することができ、有効な表示のない化粧品の販売を禁止することができるようになる。

重大な有害事象の報告

法案では、化粧品製造業者に対して重大な有害事象をFDAに報告することを義務付けている。法案における「重大な有害事象」の定義は、化粧品の使用を原因とする健康関連の事象全般で、医療介入を必要とするものをさす。発疹のような事象も年単位で報告する義務がある。
S.1113やS.2003同様、パーソナルケア商品の安全性に関する法案では、消費者からの有害事象を受け付ける窓口として、化粧品のラベルに米国内にある相談窓口を記載することを義務付けている。この情報が記載されていない製品は不正表示とみなされ、入国の時点で保留または拒否の対象となる。

GMP(医薬品の製造管理及び品質管理の基準)

パーソナルケア商品の安全性に関する法案では、FDAに対し、「現在の業界標準」をもとに化粧品に関するGMPを制定する権限を付与している。FDAが規制する他の業界では、GMPは衛生状態、ハザード管理、記録といった生産面を規制しているが、化粧品においては、検査中にFDAが参照できる強制力のある基準が設けられる予定だ。GMPを遵守しなかった場合、警告書(Warning Letter)や 輸入警報(Import Alert)、輸入拒否といった規制措置がとられる可能性がある。
化粧品に関するGMPは、FDAがルール化する見込みである。その過程において、FDAは規則を提示し、業界や消費者からの意見を募り、それに基づいて追加提案を行って、さらなる意見を求めたのち、ルール化を中止、あるいは最終化することになる。
最終的な規則では、事業者に対するコンプライアンスの期限を設定する。期限は、規則で規定される事業規模に応じて設定される場合が多いようだ。FDAが方針を決定し、事業者は要件を満たす準備が必要であるため、規則の完全導入までには数年かかる可能性がある。

成分評価

当法案では、FDAによる年一度の成分評価も規定されている。FDAが特定の化粧品成分に関する安全データを分析したうえで、制約なく安全に使用できる一定の条件や使用方法によって安全である、あるいは使用できる安全性を満たしていない、という判断を下す。この判断をもとに、化粧品の特定の成分の使用を許可する、あるいは禁止する規定を制定する。
また、有害なポリフルオロアルキル化合物を使用した製品は、検討の余地なく禁止される。
化粧品の安全性評価に向けてより多くのリソースが割り当てられれば、現時点で使用されている成分を禁止、あるいは制限する可能性もある。該当する成分を使用している場合には、コンプライアンスを維持するために成分を変更する必要があるかもしれない。

最後に

パーソナルケア商品の安全性に関する法案は可決までにまだ時間がかかるが、これまで述べたような要件に向けた動きは民主党、共和党双方が支持しており、提起されている規則は、FDAが規制する他の業種の既存の規則に非常に類似している。この改正は多くの議員からの支持を得ているだけでなく、自社製品に関する規制の強化を議論する企業もある。また、当法案はバーツビーズ、ジョンソンエンドジョンソン、ロレアルをはじめとする大手化粧品メーカーも支持している。
化粧品の安全性に関する法案に一貫性があることを鑑みると、1つは今後数年以内に成立する見込みだ。そうなれば、米国で事業を継続するためには変更に適応し、調整を図ることが求められる。


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