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13. 消毒液(サニタイザー)とFDA

新型コロナウイルスの感染拡大がなかなか収まりません。日本中のドラッグストアやコンビニからマスクが姿を消してしまった時期もありましたが、商魂たくましいアジアの商人が中国各地から日本に向けて大量にマスクを送ったこともあり、マスクを買うために朝から行列につくということもなくなりました。
しかしアメリカや欧州では、まだまだ十分な量のマスクが流通しておらず、必要な場所に必要な量がいきわたってはいないようです。マスクはもともとFDAにおいてClass-IIのメディカルデバイスとされており、意外と輸入が難しい製品なので、なかなか輸入量が増えませんでした。そうした事情にいち早く対応したのはFDAです。FDAは一般の人が日常使うマスクについては、ある条件を満たした製品であれば、従来のような厳しい規制をはずすという発表をし、輸入を促進させて全米のマスク不足を解消する動きを見せています。FDAも、この未曽有のコロナ騒動に対して、柔軟な対応をしているようです。

さて、今日はマスクではなく消毒剤の話です。消毒剤というと、手の消毒に使う「手指消毒剤」と空間や机などを消毒する「空間除菌剤」のどちらかをイメージされると思いますが、今日の主役は手指消毒剤、いわゆるサニタイザーの方です。こちらもスーパーやドラッグストアにて、一時期影も形もなかった時期がありました。
ところで消毒剤や洗浄剤には「抗菌」「除菌」「殺菌」「滅菌」「消毒」といった言葉が使われていますが、それぞれの意味の違いは理解できますでしょうか。

◇  抗菌
「抗菌」とは学術用語であり、主に微生物に対して使われることが多いようです。「菌の繁殖を抑制する」というニュアンスが強く、菌を除去したり殺したりする効果より「あらかじめ菌がすみにくい環境をつくる」というイメージです。

◇  除菌
「除菌」も菌を殺すのではなく「取り除く」意味として使われます。殺菌や消毒効果をうたいたい場合に使われることが多いようですが、その使用範囲は医薬品や医薬部外品ではない製品に限られています。
このように「抗菌」と「除菌」には細菌を殺す力がないことがわかります。

◇  殺菌
一方「殺菌」とは、病気の原因となる有害な菌や最近、ウイルスを死滅させることを意味します。ちなみに「殺菌」という言葉は、薬機法の定めにより医薬品や医薬部外品にしか使用できません。また「薬用」と銘打っている製品は医薬部外品と考えてよいでしょう。

◇  滅菌
「滅菌」とは、熱や薬品の力で細菌を全滅させて、無菌状態を作り出すことをいいます。日本薬局方では「滅菌操作後、被滅菌物に微生物の生存する確率が100万分の1であること」と定められています。「滅菌済」と書かれている製品には菌が存在しないと思っていいでしょう。

◇  消毒
では、「消毒」は何を意味するのでしょうか。日本薬局方では、消毒とは「生存する微生物の数を減らすために用いられる処置法で、必ずしも微生物をすべて殺滅したり除去するものではない」とあります。つまり、「病原性のある細菌をある程度死滅させ、感染症を防げる程度まで除去したり無害化したりすること」と言えます。薬剤を使う方法以外には焼却、煮沸、日光や紫外線照射が挙げられます。
このように「殺菌」「滅菌」「消毒」は細菌を殺す意味合いが含まれています。

「何(物・微生物など)に対して」「菌がどうなる(死滅する、減らす、取り除く)」などの違いを知る必要があり、それらは各種市販品の効能や位置付けを知る手がかりとなります。
商品名は伏せますが、「キ○イキ○イ」など「殺菌・消毒」とはっきりうたわれているハンドソープはいうまでもなく医薬部外品です。また、「お○りナップ」というシートは汚れを絡めとるための「化粧水類」とあり、医薬部外品ではありません。「ファ○リーズ」も布製品用の「消臭・除菌」製品で、菌を殺す力はありません。
100円ショップで売っている床や家具用のクリーナーシートには「除菌効果がある」とは書かれていますが、やはり菌を殺す役割ではなく、あくまでも「菌を取り除く」だけのもののようです。

手指消毒剤は、石鹸や水で手洗いができない場合に大変便利な製品です。名前のとおり消毒剤、つまり病原性のある細菌をある程度死滅させてくれなければなりませんので、これは化粧品の仲間ではなく、医薬部外品の仲間です。FDAでも、手指消毒剤を市販(非処方薬)薬、つまりOTC医薬品として規制しています。
実は数年前までさまざまな成分の手指消毒剤が市販されていましたが、その効果にはいくつかの疑問が投げかけられていました。そして2019年4月、FDAは、塩化ベンザルコニウム、エチルアルコール、イソプロピルアルコールの3つの成分だけを手指消毒剤の有効成分と認めるという「手指消毒剤の安全性と有効性に関する最終規則」を発表しました。これにより、この3つ以外の成分が含まれる手指消毒剤は市販することができなくなりました。

以下に禁止成分28種類を挙げますが、これらは防腐剤・抗菌剤・消臭剤・ハンドソープ・ボディーソープ・化粧品(洗顔、クレンジング、スキンケア、ヘアケア、ボディケア、日焼け止めなど)・薬用歯磨き剤などさまざまな製品に使われているものばかりです。
しかしそれだけ、手指消毒剤をはじめとしたOTC医薬品は「医師の監督、処方箋なしでも十分に安全かつ有効と認められた薬」なのだ、ということをよくよくご理解ください。


◇  FDA「手指消毒剤の安全性と有効性に関する最終規則」内に記された禁止成分28種類

  1. クロフルカルバン(Cloflucarban、ハロカルバン)
  2. フルオロサラン(Fluorosalan)
  3. ヘキサクロロフェン(Hexachlorophene)
  4. ヘキシルレゾルシノール(Hexylresorcinol)
  5. ヨウ素複合体(アンモニウム、硫化、ポリオキシエチレンソルビタンラウリル酸塩化合物)(ammonium ether sulfate、polyoxyethylene sorbitan monolaurate)
  6. ヨウ素複合体(リン酸、アルキラリロキシポリエチレングリコール化合物)(phosphate ester of alkylaryloxy polyethylene glycol)
  7. ノニルフェノキシポリ(エチレノキシ)エタノリジン(Nonylphenoxypoly (ethyleneoxy) ethanoliodine)
  8. ポロキサマー(ヨウ素複合体)(Poloxamer-iodine complex)
  9. ポビドン(ヨウ素5~10%品)(Povidone-iodine 5 to 10 percent)
  10. アンデコイリウム塩化物ヨウ素複合体(Undecoylium chloride iodine complex)
  11. 塩化メチルベンゼトニウム(メチルベンゼトニウムクロライド)(Methylbenzethonium chloride)
  12. フェノール(1.5%以上)Phenol (greater than 1.5 percent)
  13. フェノール(1.5%未満)Phenol (less than 1.5 percent)
  14. クレゾール(Secondary amyltricresols 2級アミルトリクレゾール)
  15. オキシクロロ錯体ナトリウム(Sodium oxychlorosene)
  16. トリブロムサラン(Tribromsalan)
  17. トリクロサン(トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル)(Triclosan)
  18. トリクロカルバン(トリクロロカルバニリド)(Triclocarban)
  19. ブリリアントグリーン(Triple dye)
  20. クロルオキシレノール
  21. グルコン酸クロルヘキシジン
  22. ポリヘキサメチレンビグアニド
  23. ベンザルコニウムリン酸セチル
  24. 塩化セチルピリジニウム
  25. サリチル酸
  26. 次亜塩素酸ナトリウム
  27. ティーツリーオイル
  28. 植物油カリウム溶液、リン酸封鎖剤、トリエタノールアミンの配合

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